確かにクロノメーター・ブルーやエレガントコレクションの定価は、クロノメーター・スヴラン ハバナよりも手ごろだ。しかし最近のブルーの価格高騰を受けて、スヴラン ハバナはブルーダイヤルのタンタルに比べて、プレシャスメタルケースにもかかわらず“たった”2600ドル分高価なだけである。
エレガントは内部に電気機械式のムーブメントを搭載しているため、クロノメーター・スヴランとは単純に比較できないと私は考えている。もちろん私はエレガントを高く評価しているし、ぜひ所有したいと思っているが、クロノメーター・スヴランとエレガントの購買層は重ならない。また、後者は最近公表されているとおり、在庫を確保するのが難しいため、私はクロノメーター・スヴランこそが現在、F.P.ジュルヌにおける入門機の称号にふさわしいと思うのである。
誤解しないでいただきたいのだが、この金額でもまだまだ高額なことに変わりはない。そして、クロノメーター・スヴラン ハバナが、クロノメーター・ブルーやエレガントよりも定価で簡単に手に入ると約束するつもりはない。だが、理論的にはそうなるはずだ。
私が知っているのは、クロノメーター・スヴランがもっと注目されるべき時計であるということだ。発売された2005年にはメンズウォッチ賞を受賞しており、F.P.ジュルヌが時計師として大切にしていることを最もシンプルかつ直接的に表現していると広く評価されているからだ。だからこそ、ジュルヌ本人もプラチナケースの個体をメンターであり伝説の時計師である、故ジョージ・ダニエルズ氏に2010年に寄贈したのだろう。
クロノメーター・スヴランは、スモールセコンド、パワーリザーブインジケーター、そしてクロノメーターの性能を最大限に引き出すために設計された手巻きムーブメントを搭載した3針時計である。一方、ハバナは2017年に通常モデルとして登場したもので、私が想像する限り、金無垢の時計を最も控えめに表現したモデルである。
ケースは6N(グリーン)ゴールド製だが、ライトブラウンダイヤルはF.P.ジュルヌの関連企業であるレ・カドリア・ド・ジュネーブ(Les Cadraniers de Genève)が、ゴールドとルテニウムをブレンドした独特なタバコブラウンの色調を実現している。クロノメーター・スヴランの内部には、2004年以降に製造されたすべてのモデルと同様、ブリッジと地板が18Kローズゴールドで作られた手巻きムーブメントのCal.1304が組み込まれている。ケース、ダイヤル、そしてムーブメントと、どこを見てもゴールドで統一されていていながら、派手さは抑えられている。
私がジュルヌを“エントリーレベル”の企画で取り上げたいと思ったいくつかの理由のうち、いずれも生産量の少ない約4万ドル以上の金無垢の腕時計を“入門機”と表現して、読者を苛立たせるつもりは毛頭ないと誓っておきたい。この企画の目的は、特定のブランドへの入門機を明らかにし、時計メーカーが提供する最高の体験を享受するのに、必ずしも最も人気のあるモデルや最も高価なモデルを選ぶ必要はないことを示すことにあるのだ。
このことは、カルティエが今オークションで高値をつけているのが、時計の真の価値を反映した、待ち望んでいた市場の神の見えざる手によるものだという考えを打ち明けた、先述のコレクターの話を私に思い出させる。だからといって、クロノメーター・ブルーが一部の業者が提示している数十万ドルの価格に見合わないと言いたいわけではない。私は二次流通市場での価格は徐々に安定していくと確信しているが、それが10万ドルを超えるか超えないかはわからない。
将来がどうであれ、今の事実は変わらない。F.P.ジュルヌは、本人が会社の顔として現役で活躍している生きた伝説である。彼は40年間(1982年に最初の懐中時計を発表してから数えて)、時計製造のビジョンを微調整しながら取り組んできた。彼の本格的なアプローチがようやく実を結んだと言っても不思議ではない。たとえそれが、私が個人的に時計を購入することが日に日に遠ざかっていくことを意味するとしても。
しかし、私が自分の予算内で、今F.P.ジュルヌの現行モデルを購入するなら、6Nゴールド製、レザーストラップのクロノメーター・スヴラン ハバナ(税込509万800円)がイチ押しだと思っている。
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- 作品名
- 正解はクロノメーター・スヴラン ハバナだ
- 登録日時
- 2022/02/25(金) 17:21
- 分類
- 未分類
デイトナを渇望 URL 2022年03月03日(木)12時43分 編集・削除
デイトナは当時、単にコレクターに人気がなかっただけなのだ。この傾向は2000年代初頭まで続いた。